この記事の最終更新日: 2025年5月8日
こんにちは。最近はWeb開発やスマートフォンアプリなど、さまざまな場面で「REST API」という言葉を目にすることが増えましたよね。
一方で、「RESTって何のこと?」「APIとどう違うの?」など、疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんな疑問をお持ちの方に向けて、RESTという考え方の基本的なポイントをわかりやすく解説していきます。

1. そもそも「REST」って何?
1-1. RESTの由来
RESTはREpresentational State Transfer(レプリゼンテーショナル・ステート・トランスファー)の頭文字をとった言葉です。日本語に直訳すると「表現状態の移転」と、やや難しそうな響きですが、「Web上の情報(リソース)をやり取りするときのシンプルな設計思想」だと考えるとイメージしやすいでしょう。
1-2. RESTはプロトコルそのものではない
「REST=通信規格」や「REST=HTTP」と誤解されることがありますが、そうではありません。RESTはあくまでアーキテクチャスタイル(設計スタイル)であり、「こんなふうに設計すると良いよ」という一種の“ルール”や“約束事”のようなものです。
一般的には、HTTPプロトコルと組み合わせて利用することが多いので、両者が混同されがちですが、REST自体はHTTP限定のものではありません(ただし、HTTPがもっとも代表的な利用例です)。
2. どうしてRESTが必要なの?
2-1. データ連携のための共通ルールが必要
現代のシステム開発では、アプリケーションやWebサービス同士がデータをやり取り(連携)する機会が多くあります。例えば、スマートフォンアプリで表示する情報を、サーバー上のデータベースから取得する場合などが典型的ですね。
もし開発者ごとに勝手なやり方でデータをやり取りしていると、「このサービスとは連携できるけど、別のサービスとはできない」といったことが起き、利便性が下がってしまいます。
2-2. シンプルで拡張しやすい仕組みが求められた
そこで、シンプルかつ拡張性の高いデータ連携の仕組みとして考案されたのがRESTです。複雑な仕様にしないことで、異なる言語やプラットフォームでも実装しやすく、さまざまなシステムが連携しやすくなりました。
3. RESTの6つの原則とは?
RESTは大きく6つの原則(制約)で成り立っているとされます。これらをすべて遵守したサービスは「RESTful」と呼ばれます。ここでは簡単なイメージとともに解説します。
- クライアント/サーバー (Client-Server)
- クライアント(利用者側)とサーバー(サービス提供側)をはっきり分ける。
- たとえば、スマホアプリ(クライアント)は表示や入力などユーザーとのやり取りに専念し、サーバーはデータ処理や保存に専念する。
- ステートレス (Stateless)
- 各リクエスト(通信)間でサーバー側にユーザーの状態を持たない。
- 「前の通信でログインしていたから状態を覚えている」というのではなく、リクエストごとに必要な情報をすべて含むのが基本。
- ただし、認証トークンやCookieなどを使い、ユーザーを特定できるようにする手法はよく使われています。
- キャッシュ可能 (Cacheable)
- レスポンスがキャッシュできる場合は、クライアントやプロキシサーバーにキャッシュを活用してもらう。
- 同じデータを何度も取得する必要がなければ通信量を減らせるため、効率や応答速度が高まります。
- 統一インターフェース (Uniform Interface)
- リソース(データ)へのアクセス方法や形式を統一する。
- 具体的には、HTTPメソッド(GET、POST、PUT、DELETEなど)を用いて操作を表し、URL(エンドポイント)で「どのリソースを扱うか」をシンプルに示す。
- 階層化システム (Layered System)
- サーバーが内部的に複数の階層やプロキシ、ロードバランサーなどを挟んでいても、クライアントから見たときには一貫して同じインターフェースでアクセスできる。
- コード・オン・デマンド(任意)
- 必要に応じて、クライアントにプログラム(JavaScriptなど)をダウンロードさせて実行することができる。
- これはRESTの必須要件ではなく、「あれば便利」という位置づけです。
4. RESTで扱う「リソース」とは?
4-1. リソース=Web上のデータや情報のかたまり
RESTでとくに重要な概念が、「リソース(Resource)」です。
- SNSで言えば「投稿」や「ユーザー」
- ネットショップなら「商品」や「注文」
- 社内システムなら「従業員」や「顧客」
といった具合に、Web上で識別できるあらゆる情報のかたまりを指します。リソースは必ずしもファイルではなく、「Web上に存在するデータの単位」だとイメージしましょう。
4-2. リソースをURLで表す
RESTでは、リソースごとに一意のURL(エンドポイント)を割り当てることが基本の考え方です。
たとえば、ユーザー(users
)というリソースを扱う際は、以下のようにURIを設計します。
GET /users
→ ユーザー一覧を取得GET /users/1
→ IDが1のユーザーを取得
このように、リソースを「名詞」で示す形でURLをつけるのがよくあるパターンです。
5. HTTPメソッドで操作を表現する
5-1. RESTとHTTPメソッドの関係
RESTのAPIでリソースを操作するときに使われるのが、HTTPメソッドです。
- GET:リソースの取得(読み取り)
- POST:新規作成
- PUT:完全な置き換え(更新)
- PATCH:一部更新
- DELETE:削除
などが代表的。これらをうまく組み合わせることで、リソースをどのように操作したいのか表現します。
5-2. 具体例
先ほどの「ユーザー」を例にすると、こんな感じです。
操作したいこと メソッド エンドポイント 例 | |||
---|---|---|---|
ユーザー一覧を取得 | GET | /users | GET /users |
IDが1のユーザー情報を取得 | GET | /users/1 | GET /users/1 |
新規ユーザーの登録 | POST | /users | POST /users |
IDが1のユーザー情報を(全部)更新 | PUT | /users/1 | PUT /users/1 |
IDが1のユーザー情報を(一部のみ)更新 | PATCH | /users/1 | PATCH /users/1 |
IDが1のユーザーを削除 | DELETE | /users/1 | DELETE /users/1 |
※ PUT
と PATCH
の使い分けは、プロジェクトやチームによって方針が異なる場合があります。
6. REST APIでよく使われるデータ形式
6-1. JSONとXML
REST APIで多く使われるデータ形式としては、JSON(JavaScript Object Notation)とXML(Extensible Markup Language)があります。
- JSON:軽量で扱いやすく、JavaScriptや他の多くの言語とも親和性が高い
- XML:タグでデータを囲む形式で拡張性が高い
現在ではJSON形式が主流となっており、TwitterやGitHubのAPIもJSONを採用している場合が多いです。
6-2. ヘッダーで形式を指定
クライアントがAPIにリクエストするとき、HTTPヘッダーのAccept
やContent-Type
などを使って、データをJSONにするのかXMLにするのかを指定する場合があります。
RESTの考え方的には、「どの形式で送受信するか」は統一インターフェースを保ちつつクライアントとサーバー間でうまくやりとりできればOK、というスタンスです。
7. RESTのメリット
7-1. わかりやすく、実装しやすい
- URLで「どのリソースを扱うか」を指定し、HTTPメソッドで「どう操作するか」を示すだけなので、直感的で学習コストが低いです。
- 多くのプログラミング言語でHTTP通信を扱うライブラリが整備されているため、実装が簡単です。
7-2. システム連携がスムーズ
- さまざまなサービスが同じRESTの考え方を採用しているため、外部サービスや他のチームが開発したシステムと連携しやすいです。
- マイクロサービスアーキテクチャなど、小さなサービス同士をつなげる際にもRESTの仕組みが活きてきます。
7-3. 拡張しやすく、保守が容易
- RESTの原則を守るよう設計すると、URLやメソッドの使い方が統一されるので、APIの拡張・修正がしやすくなります。
- 大規模開発でメンバーが増えても、統一されたルールに則って設計・実装できるため、保守性が高まります。
8. RESTをより活用するためのポイント
8-1. 適切なステータスコードを使用する
RESTでは、HTTPステータスコードによって結果を明確に伝えることも大切です。
- 200 OK:成功
- 201 Created:リソース作成成功
- 400 Bad Request:リクエストが不正
- 401 Unauthorized:認証が必要
- 404 Not Found:リソースが存在しない
- 500 Internal Server Error:サーバー側のエラー
などを正しく返すことで、クライアントはどう対応すべきか判断しやすくなります。
8-2. URI設計は「名詞ベース」で
リソースを表すURIは「/users, /orders」のように名詞ベースで設計するのが一般的。
- 「アクション(動詞)」をURIに入れるとわかりづらくなる
- たとえば
/createUser
のように動詞ベースにするのではなく、POST /users
とするほうがRESTの思想に合っています。
8-3. バージョン管理を検討する
APIが成長していくと、過去のバージョンとの互換性や、新しい機能追加への対応が必要になります。
/v1/users
,/v2/users
といった形でURIにバージョン番号を付与する方法- ヘッダーにバージョン情報を載せる方法
など、チームやプロダクトの方針に合わせて管理しましょう。
9. RESTと他のデータ連携スタイルとの違い
9-1. SOAPとの比較
かつてWebサービス間連携でよく使われていたSOAP(Simple Object Access Protocol)は、XMLを使い、操作がWSDL(Web Services Description Language)で定義されるなど、より厳密かつ複雑な仕様を持っています。
- SOAP:厳密な定義、セキュリティやトランザクション管理機能を重視した複雑な仕組み
- REST:シンプルかつ軽量、HTTPの標準機能をフル活用
という違いがあります。最近では、軽量で実装しやすいRESTを選ぶケースが増加しています。
9-2. GraphQLとの比較
GraphQLはFacebookが開発したクエリ言語で、クライアント側が「どのフィールドが欲しいのか」を細かく指定し、必要なデータだけを取得できます。
- REST:エンドポイントごとにデータの形を固定しやすい。シンプル。
- GraphQL:柔軟にデータ取得ができるが、サーバー側のセットアップにやや工数がかかる。
プロジェクトの規模や要件に応じて、RESTとGraphQLを使い分ける事例もあります。
10. まとめ
- RESTは、「Web上のリソースをやり取りするためのシンプルな設計スタイル」のこと。
- HTTPメソッドとURIを使い分けることで、誰が見ても直感的にわかるデータ連携が可能。
- システム間連携の主流となっており、多くのWebサービスやアプリがRESTful APIを提供している。
- ステータスコードやURI設計などのポイントを押さえて実装すれば、わかりやすく保守性の高いAPIを作れる。
現代のWeb開発やアプリ開発には欠かせないRESTの知識。まずは今回ご紹介した基本の仕組みと設計のポイントを押さえておくと、ドキュメントやチュートリアルを読み解く際にスムーズに進められるようになるはずです。
もしこれから実際にRESTful APIを使って開発する場合は、HTTPステータスコードや認証方法(Basic認証、OAuthなど)、JSONスキーマ設計なども併せて学んでいくと、より理解が深まるでしょう。
以上、RESTの基礎に関する解説でした。少しでも参考になれば幸いです。ぜひ実際のAPIを触りながら、RESTの世界を体感してみてください!

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