この記事の最終更新日: 2025年6月2日
はじめに
インターネット上でWebサイトを閲覧したり、メールを送受信したりするとき、ドメイン名とIPアドレスが併用されます。**ドメイン名(例:example.com)**は人間にとって覚えやすい名前で、**IPアドレス(例:192.0.2.1)**はコンピュータ同士の通信に使われる数値です。
DNS(Domain Name System)は、これらを結びつけるインターネットの“住所録”の役割を担っており、複数のレコードタイプで構成されています。本記事ではDNSの基本構造から主要レコード、運用上のポイント、さらにはDNSSECや逆引きDNSについても、初心者にも理解できるよう噛み砕いて解説します。

1. ドメインとDNSの基礎
1-1. ドメインの構造
ドメインは、インターネット上の住所のようなものです。ドメインは階層構造になっており、末尾から順に以下のように構成されています:
例:www.example.co.jp
部分 | 意味 |
---|---|
.(ルート) | すべてのドメインの最上位。通常は省略される |
jp | トップレベルドメイン(TLD)。日本の国別コード |
co | セカンドレベルドメイン。業種や組織区分を表す |
example | 実際の企業やサービス名などのドメイン部分 |
www | サブドメイン。ホスト名としてよく使われる “www” |
このような階層構造により、ドメインは一意に識別され、整理された管理が可能になっています。
1-2. DNSの仕組みとは?
DNSは、ドメイン名とIPアドレスを対応させる仕組みで、次のような流れで機能します。
- ユーザーがブラウザにURLを入力する(例:www.example.com)
- リゾルバ(ISPやOSに組み込まれたDNSクライアント)がDNSキャッシュを確認
- キャッシュに情報がなければ、ルートDNSサーバーへ問い合わせ
- ルートDNSサーバーが**TLDサーバー(例:.com)**を紹介
- TLDサーバーが、オーソリティブDNSサーバー(最終回答者)を紹介
- 最後に、オーソリティブサーバーがIPアドレスを返す → ブラウザが接続
この一連の仕組みを「名前解決(name resolution)」と呼びます。
2. 主要なDNSレコードの詳細と用途
DNSサーバーは、ドメインと関連するさまざまな情報(レコード)を管理します。 以下によく使われるレコードの詳細と活用場面を示します。
レコード | 説明 | 代表的な用途・活用例 |
---|---|---|
A | IPv4アドレスと結びつける | WebサーバーやAPIのIPアドレス指定 |
AAAA | IPv6アドレスと結びつける | IPv6対応サイトでの利用 |
CNAME | 別ドメインへのエイリアス設定 | www → example.com など |
MX | メールサーバーの指定 | @example.com 宛てメール配送 |
TXT | テキストデータの記録(SPF、DKIMなど) | メール送信元認証やGoogleサイト認証など |
NS | 使用するネームサーバーの指定 | ドメインの名前解決をどこに任せるか |
SOA | ゾーン情報の管理 | ゾーンの責任者や更新ポリシー |
TTLとは?
TTL(Time To Live)は、DNSレコードがキャッシュとして保存される期間(秒単位)を表します。短すぎるとDNS問い合わせが頻発し、長すぎると変更がすぐに反映されません。
例:TTL=3600(1時間)なら、変更しても1時間は前の情報が使われ続けます。
SOAレコードの詳細構成
- MNAME:ゾーンの主要DNSサーバーのホスト名
- RNAME:管理者の連絡先(@は.で表記)
- Serial:変更があるたびにカウントアップする番号
- Refresh:セカンダリDNSが更新チェックする間隔(秒)
- Retry:更新失敗時に再試行する間隔
- Expire:DNS情報が無効と見なされるまでの期間
- Minimum TTL:ネガティブキャッシュの保持時間
3. 実際の運用とトラブル対策
ドメイン取得後の流れ
- ドメインレジストラで登録
- 利用するネームサーバー(NSレコード)を指定
- 必要なA/MX/CNAME/TXTレコードなどをDNSホスティングで設定
- DNSが正しく応答するか確認(
dig
/nslookup
)
トラブルが起こるケースと対策
- Webサイトが表示されない
- AレコードのIPが間違っている、もしくは反映待ち(TTL)
- メールが届かない
- MXレコードの誤設定、SPFやDKIMがない
- DNS変更が反映されない
- TTLが長い、ローカルキャッシュの影響
キャッシュ削除例
# Windows
ipconfig /flushdns
# macOS/Linux(digを使用)
dig example.com +trace
4. 応用的なDNSの機能
逆引きDNS(PTRレコード)
- IPアドレス → ドメイン名を解決
- 主にメールサーバーが正当な送信元か判断するために使用
- 管理は通常、IPアドレスの管理者側が行う
DNSSEC(DNS Security Extensions)
- DNS情報の「正当性(改ざんされていないこと)」を検証するための技術
- 鍵と署名を使って、応答が本物であることを保証する
- 中間者攻撃やキャッシュポイズニング対策として有効
Anycast DNS
- 世界中に複数のDNSサーバーを展開し、地理的に近いサーバーが応答
- 高速・冗長性・DDoS耐性が向上
- CloudflareやGoogle Public DNSなどが代表例
まとめ
- DNSは「人間が使うドメイン名」と「コンピュータが使うIPアドレス」をつなぐ仕組み
- AレコードやMXレコードなど、複数のタイプのDNSレコードを適切に設定することが大切
- TTLやSOAなど、運用面での管理もDNSの安定運用には不可欠
- 応用機能(逆引きDNS、DNSSEC、Anycast)を活用することで、セキュリティやパフォーマンスも向上
DNSは一見難しそうですが、仕組みを理解して一つひとつ設定を試してみることで、着実に扱えるようになります。自分のドメインを持っている方も、これから取得しようとしている方も、DNSの基本をしっかり身につけておきましょう!

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