この記事の最終更新日: 2025年6月9日
企業ネットワークや家庭用LANで不可欠なネットワーク機器「ルーター」と「スイッチ」。サブネット(小規模ネットワーク)に分割して運用する際は、それぞれがどう連携するのか理解することが重要です。本記事では、技術的な背景も交えながら、ルーターとスイッチの仕組みと役割を丁寧に解説します。

サブネットワーキングとは?
ネットワークを複数の小さなグループに分割し、効率的かつ安全に運用する手法です。
サブネットマスクとCIDR表記
- サブネットマスク:IPアドレスをネットワーク部とホスト部に分けるためのビットマスク(例:255.255.255.0)。
- CIDR(Classless Inter-Domain Routing):
/24
や/16
のようにネットワーク長を表記する方式。
例:
192.168.10.0/24
はネットワーク部が24ビット、ホスト部が8ビットのサブネットを意味します。
サブネット分割のメリット
- トラフィック分散:不要なブロードキャストを抑制。
- セキュリティ向上:部門間でアクセス制御を細かく設定可能。
- 運用管理性:ネットワーク故障時の切り分けが容易。
ルーターの役割|サブネット間のルーティング
ルーターは主にOSI参照モデルの第3層(ネットワーク層)で動作し、異なるサブネット間の通信を中継します。
ルーティング処理の仕組み
- ルーティングテーブル:宛先ネットワークと次ホップ(ネクストホップ)の情報を保持。
- パケット受信:受け取ったIPパケットの宛先IPを確認。
- 最長一致(Longest Prefix Match):ルーティングテーブルから最適ルートを選択。
- 次ホップへ転送:適切なインターフェースからパケットを送出。
ルーティングの種類
- スタティックルート:管理者が手動設定。小規模環境で安定運用。
- ダイナミックルート:OSPFやRIPなどのプロトコルで自動学習。大規模ネットワークで柔軟性向上。
スイッチの役割|同一サブネット内のフレーム中継
スイッチはOSI第2層(データリンク層)で動作し、同じサブネット内の機器間でEthernetフレームを転送します。
MACアドレス学習とフィルタリング
- アドレス学習:受信フレームの送信元MACアドレスと受信ポートをテーブルに登録。
- 宛先照会:
- テーブルに存在 → 該当ポートにフレーム転送(フィルタリング)。
- 存在しない → 全ポートにフレーム転送(フラッディング)。
ブロードキャストとフラッディング
- ブロードキャストフレーム:全ポートに転送し、サブネット内全機器に到達。
- フラッディング:未知MAC宛てのフレームを全ポートに送信。
L2スイッチ vs L3スイッチの違い
種類 | 主な機能 | 利用シーン |
---|---|---|
L2スイッチ | MACアドレスによるフレーム転送 | 同一サブネット内の接続 |
L3スイッチ | IPルーティング機能を追加搭載 | サブネット間の高速転送 |
VLANとブロードキャストドメイン
- VLAN(仮想LAN):スイッチ上で論理的にネットワークを分割。ポートやタグでグループ化し、異なるVLAN間通信はルーターやL3スイッチで制御。
- ブロードキャストドメイン:ブロードキャストが届く範囲。サブネットやVLAN単位で分割しトラフィックを最適化。
実践構成例(Cisco IOS)
! スイッチ側: VLAN設定
interface GigabitEthernet0/1
switchport mode access
switchport access vlan 10
interface GigabitEthernet0/2
switchport mode access
switchport access vlan 20
vlan 10
name Sales
vlan 20
name Dev
! ルーター側: サブインターフェースと静的ルート設定
interface GigabitEthernet0/0.10
encapsulation dot1Q 10
ip address 192.168.10.1 255.255.255.0
interface GigabitEthernet0/0.20
encapsulation dot1Q 20
ip address 192.168.20.1 255.255.255.0
ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 203.0.113.1
上記例では、VLAN 10(営業部)とVLAN 20(開発部)をそれぞれサブインターフェースでルーティングしています。
ベストプラクティスとトラブルシューティング
- 階層化ネットワーク設計:コア・ディストリビューション・アクセスの3層モデルを採用。
- ゲートウェイ冗長化:HSRPやVRRPで可用性向上。
- ポートセキュリティ:MACアドレス制限で不正アクセス防止。
トラブル時の確認コマンド
- ルーター:
show ip route
,ping
,traceroute
- スイッチ:
show mac address-table
,show vlan
,show spanning-tree
まとめ
サブネットワーキングでは、スイッチが同一サブネット内のフレーム中継、ルーターが異なるサブネット間のパケットルーティングを担います。さらにVLANやL3スイッチ、冗長化技術を組み合わせることで、効率的で柔軟かつ安全なネットワークを構築できます。
よくある質問(FAQ)
Q. L3スイッチだけでルーティングは完結しますか?
L3スイッチはルーティング機能をサポートしますが、対応プロトコルや性能要件を検討した上で導入しましょう。
Q. VLAN間ルーティングの注意点は?
ACL(アクセス制御リスト)で不要トラフィックを遮断し、最小権限の原則でネットワークを保護すること。

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