この記事の最終更新日: 2026年6月4日

インターネット接続やオンラインゲーム、自宅サーバー、ポート開放、WebRTCなどを調べていると、二重NATという言葉が出てくることがあります。
二重NATは、普段Webサイトを見たり動画を視聴したりするだけなら、あまり意識しないかもしれません。
しかし、次のような場面では通信トラブルの原因になることがあります。
- ポート開放したのに外部からアクセスできない
- オンラインゲームでNATタイプが厳しい
- ボイスチャットやP2P通信が不安定
- WebRTCの通話が一部環境でつながらない
- 自宅サーバーやNASに外部から接続できない
- ルーターを買い替えたら通信が不安定になった
この記事では、二重NATとは何か、なぜ通信トラブルの原因になるのか、どう確認・対処すればよいのかを初心者向けにわかりやすく解説します。
二重NATとは?
二重NATとは、簡単に言うと、
NATが2段階で行われている状態
です。
通常、家庭内ネットワークではルーターがNATを行います。
PC・スマホ
↓
家庭用ルーター(NAT)
↓
インターネット
一方、二重NATでは、NATを行う機器が2つあります。
PC・スマホ
↓
自分で設置したルーター(NAT)
↓
プロバイダや回線業者のルーター・ホームゲートウェイ(NAT)
↓
インターネット
このように、ルーターやホームゲートウェイが2段階になり、両方でNATが動いている状態を二重NATと呼びます。
NATとは何かを簡単におさらい
二重NATを理解するには、まずNATをざっくり理解しておく必要があります。
NATとは、IPアドレスを変換する仕組みです。
家庭内のPCやスマホには、通常、次のようなプライベートIPアドレスが割り当てられます。
PC:192.168.1.10
スマホ:192.168.1.11
ゲーム機:192.168.1.12
これらのIPアドレスは、家庭内では使えますが、インターネット上ではそのまま使えません。
そこでルーターが、内部のプライベートIPアドレスを外部向けのIPアドレスに変換します。
192.168.1.10
↓ NAT
203.0.113.10
この変換によって、家庭内の複数端末が1つのインターネット回線を共有できます。
二重NATのイメージ
通常のNATは、変換が1回です。
PC
192.168.1.10
↓
ルーターでNAT
↓
インターネット
一方、二重NATでは、変換が2回行われます。
PC
192.168.1.10
↓
自宅ルーターでNAT
↓
192.168.0.2
↓
ホームゲートウェイでNAT
↓
インターネット
つまり、内部ネットワークがさらに別の内部ネットワークの中に入っているような状態です。
たとえるなら、
部屋の中にさらに別の鍵付きの部屋がある
ようなイメージです。
外から通信を届けるには、1つ目の扉だけでなく、2つ目の扉も通過しなければなりません。
二重NATが起きやすい構成
二重NATは、次のような構成でよく発生します。
回線業者のホームゲートウェイ + 自前ルーター
よくあるのが、回線業者から提供されたホームゲートウェイに、自分で購入したWi-Fiルーターを接続しているケースです。
PC・スマホ
↓
自前Wi-Fiルーター
↓
回線業者のホームゲートウェイ
↓
インターネット
このとき、自前ルーターもルーターモード、ホームゲートウェイもルーター機能あり、という状態だと二重NATになります。
ONU一体型ルーター + Wi-Fiルーター
光回線では、ONUやホームゲートウェイにルーター機能が入っている場合があります。
そこにさらにWi-Fiルーターを接続すると、二重NATになることがあります。
端末
↓
Wi-Fiルーター
↓
ONU一体型ルーター
↓
インターネット
マンション備え付けのネットワーク + 自前ルーター
マンションや寮、社宅などでは、建物側でルーターやNATが入っていることがあります。
その下に自分のWi-Fiルーターを置くと、二重NATになることがあります。
PC・スマホ
↓
自分のWi-Fiルーター
↓
マンション設備側のNAT
↓
インターネット
モバイルルーター + Wi-Fiルーター
モバイル回線でも、モバイルルーターの下に別のWi-Fiルーターを接続すると、二重NATになる場合があります。
さらに、モバイル回線では通信事業者側でCGNATが使われていることもあります。
その場合、家庭内の二重NATよりさらに外側でもNATが行われている可能性があります。
二重NATは必ず悪いのか?
二重NATは、必ずしも常に悪いわけではありません。
普通にWebサイトを見る、動画を見る、SNSを使う、メールを送るといった用途では、問題が起きないことも多いです。
ブラウザ → Webサイト
動画アプリ → 配信サーバー
メールアプリ → メールサーバー
これらは基本的に、内側から外側へ通信を開始するため、NATが2段階でも動作することがあります。
問題になりやすいのは、外側から内側へ通信したい場合や、端末同士が直接通信したい場合です。
二重NATが通信トラブルの原因になる理由
二重NATが問題になる理由は、通信の通り道が複雑になるからです。
特に外部から内部端末へ接続したい場合、2つのNATを越える必要があります。
外部の端末
↓
1段目のNAT
↓
2段目のNAT
↓
内部端末
1つ目のルーターで通信を通しても、2つ目のルーターで止まることがあります。
逆に、2つ目のルーターを設定していても、1つ目のルーターで止まることもあります。
つまり、
片方のルーターだけ設定しても通信が届かない
という状態が起きやすくなります。
ポート開放が失敗しやすくなる
二重NATで特に問題になりやすいのが、ポート開放です。
ポート開放とは、外部から来た特定ポートの通信を、内部の特定端末へ転送する設定です。
通常のNATなら、ルーターに次のように設定します。
外部 8080
↓
内部 192.168.1.10:80
しかし二重NATでは、ルーターが2つあります。
インターネット
↓
ホームゲートウェイ
↓
自前ルーター
↓
PC
この場合、自前ルーターだけでポート開放しても、ホームゲートウェイ側で通信が止まることがあります。
そのため、必要に応じて次のように2段階で転送する必要があります。
ホームゲートウェイ:
外部 8080 → 自前ルーター
自前ルーター:
8080 → PC 192.168.1.10:80
このように、二重NATではポート開放の設定が複雑になります。
オンラインゲームで問題になる理由
オンラインゲームでは、NATタイプが問題になることがあります。
たとえば、次のような表示を見たことがあるかもしれません。
NATタイプ:オープン
NATタイプ:モデレート
NATタイプ:ストリクト
二重NATになると、外部との接続が制限されやすくなり、NATタイプが厳しく表示されることがあります。
その結果、次のような問題が起きる場合があります。
- マッチングしにくい
- ボイスチャットが不安定
- フレンドと接続できない
- 自分がホストになれない
- P2P通信が失敗する
ゲームによってはサーバー経由で問題なく動くこともありますが、P2P通信を使うゲームでは二重NATの影響を受けやすくなります。
WebRTCやP2P通信で問題になる理由
WebRTCやP2P通信では、端末同士が直接通信しようとします。
端末A ←→ 端末B
しかし、二重NATでは通信経路が複雑になります。
端末A
↓
NAT A-1
↓
NAT A-2
↓
インターネット
↓
NAT B-1
↓
NAT B-2
↓
端末B
このように、両端が二重NATになっていると、直接通信がさらに難しくなります。
WebRTCではSTUN、TURN、ICEなどを使って通信経路を探しますが、二重NATや厳しいファイアウォール環境では、直接通信に失敗し、TURNサーバー経由になることがあります。
自宅サーバー公開で問題になる理由
自宅でWebサーバーやMinecraftサーバー、NASなどを公開したい場合、二重NATは大きな障害になることがあります。
通常、自宅サーバーを公開するには、ルーターでポート開放を行います。
外部 25565
↓
Minecraftサーバー
しかし、二重NATでは、外部からの通信が上位ルーターで止まる可能性があります。
そのため、自分のWi-Fiルーターでは設定が合っているのに、外部からアクセスできない、という状況が起こります。
初心者がハマりやすいのはここです。
ルーターのポート開放設定は合っているのに、なぜか外からつながらない
この原因の一つが二重NATです。
二重NATかどうか確認する方法
二重NATかどうかを確認するには、いくつかの方法があります。
ルーターのWAN側IPアドレスを確認する
まず、自分のルーターの管理画面を開き、WAN側IPアドレスを確認します。
WAN側IPアドレスが次のようなプライベートIPアドレスになっている場合、上位にさらにNATがある可能性があります。
10.x.x.x
172.16.x.x ~ 172.31.x.x
192.168.x.x
たとえば、自前ルーターのWAN側IPが次のようになっていたとします。
192.168.0.10
この場合、自前ルーターの上にさらに別のルーターがあり、そのルーターからプライベートIPをもらっている可能性があります。
つまり、二重NATの可能性があります。
ルーターが2台あるか確認する
物理的に次のような構成になっていないか確認します。
回線終端装置・ホームゲートウェイ
↓
Wi-Fiルーター
↓
PC・スマホ
ホームゲートウェイにもルーター機能があり、Wi-Fiルーターもルーターモードで動いている場合、二重NATになっている可能性があります。
tracerouteで経路を確認する
少し技術的ですが、traceroute や tracert で経路を見る方法もあります。
Windowsなら次のように実行します。
tracert 8.8.8.8
macOSやLinuxなら次のように実行します。
traceroute 8.8.8.8
最初の数ホップにプライベートIPアドレスが複数出る場合、二重NATやそれに近い構成の可能性があります。
ただし、tracerouteだけで完全に判断できるわけではありません。
グローバルIPとルーターのWAN側IPを比較する
外部サイトなどで確認できるグローバルIPアドレスと、ルーター管理画面のWAN側IPアドレスを比較します。
両者が違い、かつルーターのWAN側IPがプライベートIPの場合、二重NATやCGNATの可能性があります。
外部サイトで見えるIP:203.0.113.10
ルーターのWAN側IP:192.168.0.10
この場合、ルーターの上に別のNATがあると考えられます。
二重NATとCGNATの違い
二重NATと混同されやすいものに、CGNATがあります。
CGNATは、通信事業者側で行われるNATです。
自宅端末
↓
自宅ルーター
↓
通信事業者側NAT
↓
インターネット
二重NATは、家庭内や建物内にルーターが2段階ある場合に使われることが多い言葉です。
一方、CGNATはプロバイダや携帯キャリア側でNATが行われる仕組みです。
| 項目 | 二重NAT | CGNAT |
|---|---|---|
| NATの場所 | 自宅内・建物内など | 通信事業者側 |
| ユーザーが設定変更できる可能性 | ある場合が多い | 基本的に難しい |
| ポート開放 | 上位ルーターも設定すれば可能な場合あり | 通常は難しい |
| 例 | ホームゲートウェイ + 自前ルーター | モバイル回線、一部固定回線 |
二重NATなら、自宅内の機器設定で解消できる可能性があります。
CGNATの場合、プロバイダ側の仕様なので、ユーザー側だけでは解決できないことがあります。
二重NATの対処法
二重NATを解消・回避する方法はいくつかあります。
1. 片方をブリッジモードにする
最も一般的な対処法は、片方のルーター機能を無効にして、ブリッジモードやアクセスポイントモードにすることです。
たとえば、回線業者のホームゲートウェイをルーターとして使い、自前Wi-Fiルーターをアクセスポイントとして使います。
PC・スマホ
↓
Wi-Fiルーター(アクセスポイント)
↓
ホームゲートウェイ(NAT)
↓
インターネット
この場合、NATはホームゲートウェイ側だけになります。
逆に、自前ルーターをメインルーターにして、ホームゲートウェイ側をブリッジモードにする構成もあります。
2. 自前ルーターをアクセスポイントモードにする
家庭では、自前Wi-Fiルーターをアクセスポイントモードにするのが簡単なことが多いです。
アクセスポイントモードにすると、その機器は主にWi-Fi接続を提供するだけになり、NATやルーティングは上位ルーターに任せます。
ホームゲートウェイ:ルーター機能あり
自前Wi-Fiルーター:アクセスポイントモード
これにより、ネットワークが1段階になり、二重NATを避けやすくなります。
3. 上位ルーターでポート開放する
二重NATを解消できない場合、上位ルーターと下位ルーターの両方でポート開放する方法もあります。
インターネット
↓
上位ルーター:外部ポートを下位ルーターへ転送
↓
下位ルーター:通信を内部PCへ転送
↓
PC
たとえば、次のように設定します。
上位ルーター:
外部 8080 → 下位ルーターのWAN側IP:8080
下位ルーター:
8080 → PC 192.168.1.10:80
ただし、この方法は設定が複雑になりやすく、ミスも増えます。
可能であれば二重NAT自体を解消した方がシンプルです。
4. DMZ設定を使う
上位ルーターにDMZ設定がある場合、下位ルーターへ通信をまとめて転送する方法もあります。
上位ルーターのDMZ先:下位ルーターのWAN側IP
これにより、上位ルーターに届いた通信を下位ルーターへ流しやすくなります。
ただし、DMZは外部からの通信を広く転送する設定になるため、セキュリティ面の注意が必要です。
よく理解しないまま設定するのはおすすめしません。
5. VPNやクラウド経由の方式を使う
外部から自宅内の機器にアクセスしたいだけなら、ポート開放ではなくVPNやクラウド経由のサービスを使う方法もあります。
たとえば、次のような用途ではVPNが向いていることがあります。
- NASへの外部アクセス
- 自宅PCへのリモートアクセス
- 管理画面へのアクセス
- 家庭内ネットワークへの安全な接続
直接ポートを開けるより、VPN経由にした方が安全に構成しやすい場合があります。
二重NATを解消するときの注意点
二重NATを解消するときは、適当に機器を外したり設定を変えたりすると、インターネットにつながらなくなることがあります。
特に次の点に注意しましょう。
- どの機器がルーター役なのか確認する
- DHCPサーバーが複数動いていないか確認する
- Wi-FiルーターをAPモードにする場合、管理画面へのアクセス方法を確認しておく
- プロバイダ接続情報がどの機器に設定されているか確認する
- ひかり電話などの機能に影響しないか確認する
- 設定変更前に現在の状態をメモしておく
回線業者のホームゲートウェイには、電話やテレビ、IPv6接続関連の設定が入っている場合もあります。
不安な場合は、回線業者やルーターのメーカー資料を確認しながら設定するのが安全です。
二重NATでも問題になりにくいケース
二重NATでも、次のような用途では問題が出にくいことがあります。
- Webサイト閲覧
- YouTubeや動画配信の視聴
- SNS
- メール
- クラウドストレージ
- 一般的なスマホアプリ
- サーバーに接続するタイプのゲーム
これらは基本的に、内部端末から外部サーバーへ通信を開始するため、二重NATでも動作することが多いです。
二重NATで問題になりやすいケース
逆に、次のような用途では二重NATが問題になりやすいです。
- 自宅サーバー公開
- ポート開放が必要なゲーム
- P2P型オンラインゲーム
- WebRTCの直接通信
- ボイスチャット
- リモートデスクトップ
- NASへの外部アクセス
- 監視カメラへの直接アクセス
- VPNサーバーを自宅に立てる場合
共通しているのは、
外部から内部へ通信を届けたい
端末同士で直接通信したい
という点です。
よくある誤解
ルーターが2台あるだけで必ず二重NATになる
ルーターが2台あっても、片方がアクセスポイントモードやブリッジモードなら、二重NATにならないことがあります。
重要なのは、NATを行っている機器が2つあるかどうかです。
二重NATだとインターネットは使えない
二重NATでも、Web閲覧や動画視聴は普通にできることが多いです。
問題になりやすいのは、ポート開放、P2P通信、自宅サーバー公開などです。
ポート開放すれば必ず解決する
二重NATでは、下位ルーターだけポート開放しても解決しないことがあります。
上位ルーターも含めて、通信の経路全体を考える必要があります。
二重NATとCGNATは同じ
似ていますが、同じではありません。
二重NATは自宅内や建物内の構成で起きることが多く、ユーザー側で改善できる可能性があります。
CGNATは通信事業者側のNATなので、ユーザー側だけでは解決が難しいことがあります。
初心者向けに一言で言うと
二重NATを一言で言うと、
ルーターによる住所変換が2段階になっていて、外からの通信が内部端末まで届きにくくなる状態
です。
もう少し具体的に言うと、
自宅ルーターのさらに上に別のルーターがあり、両方でNATしている状態
です。
そのため、ポート開放やP2P通信では、通信が途中で止まりやすくなります。
まとめ
二重NATとは、NATが2段階で行われている状態です。
端末
↓
自前ルーター(NAT)
↓
ホームゲートウェイ(NAT)
↓
インターネット
普通にWebサイトを見るだけなら問題にならないことも多いですが、外部から内部端末へ通信したい場合や、端末同士で直接通信したい場合にはトラブルの原因になります。
特に影響が出やすいのは、次のような場面です。
- ポート開放
- 自宅サーバー公開
- オンラインゲーム
- ボイスチャット
- WebRTC
- P2P通信
- VPNサーバー
- NASやリモートアクセス
二重NATを解消するには、片方のルーターをブリッジモードやアクセスポイントモードにする方法が一般的です。
また、どうしても二重NATを解消できない場合は、上位ルーターと下位ルーターの両方でポート開放する、DMZを使う、VPNやクラウド経由の方式を使うといった方法もあります。
初心者のうちは、まず次のように覚えておくとよいでしょう。
二重NATとは、NATが2段階になっている状態。普通のWeb閲覧では問題になりにくいが、ポート開放やP2P通信ではトラブルの原因になりやすい。
この理解があると、ルーター設定、ポート開放、自宅サーバー、オンラインゲーム、WebRTCの通信トラブルをかなり整理しやすくなります。

大阪のエンジニアが書いているブログ。



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