この記事の最終更新日: 2025年5月11日
はじめに
インターネット環境の進化に伴い、リアルタイム通信は今や身近な存在になりました。
オンライン会議、ビデオ通話、画面共有……
これらを支えている技術の一つが WebRTC(Web Real-Time Communication) です。
この記事では、
- WebRTCとは何か
- WebRTCの基本仕組み
- WebRTCを活用している有名アプリ
- WebRTCと他技術(SIP・RTMP)との比較
- Sip.jsとWebRTCの関係
を初心者にもわかりやすく紹介します。

WebRTCとは?
WebRTC(Web Real-Time Communication) とは、ブラウザ間やアプリ間で、音声・ビデオ・データ通信をリアルタイムで行うためのオープンな技術仕様です。
特徴
- プラグイン不要
専用ソフトのインストールなしで、ブラウザだけで通信できる - 低遅延・高品質
音声・映像をリアルタイムでやり取りできる - オープンソース
無料で利用可能、技術仕様も公開されている
Googleが開発をリードし、現在ではChrome、Firefox、Safari、Edgeなど主要ブラウザで広くサポートされています。
WebRTCの基本仕組み
WebRTCのリアルタイム通信は、以下の3つの要素で構成されます。
1. Media Capture(メディア取得)
カメラやマイクなどのデバイスから、音声・映像データを取得します。
ブラウザのJavaScript API(getUserMedia
)を使用してアクセスできます。
2. Peer-to-Peer Connection(ピア間接続)
端末同士を直接つなぐ仕組みです。
「シグナリング」と呼ばれる方法で、通信の初期設定(接続情報の交換)を行います。
3. Data Channel(データチャネル)
ファイル転送やチャットメッセージなど、任意のデータをリアルタイムにやり取りするためのチャネルです。
WebRTCと他技術(SIP、RTMP)との比較
リアルタイム通信を実現する技術は、WebRTC以外にもいくつか存在します。
特徴 | WebRTC | SIP | RTMP |
---|---|---|---|
主な用途 | ブラウザ間のリアルタイム通話・データ通信 | IP電話(VoIP)、ビデオ通話制御 | ライブ配信(動画ストリーミング) |
開発元 | Google中心(オープンソース) | 標準規格(IETF) | Adobe Systems(旧Flash依存) |
ブラウザ対応 | ◎(標準対応) | △(追加アプリ必要なケース多い) | ×(ネイティブ対応ほぼなし) |
通信方式 | P2P(直接通信) | サーバー経由制御 | サーバー中継 |
適したケース | オンライン会議、ビデオチャット、画面共有 | 電話ネットワーク連携、PBXシステム | 大規模ライブ配信、ストリーミング |
ポイント解説
- WebRTC
→ ブラウザ時代に最適化されたリアルタイム通信技術。追加ソフト不要。 - SIP(Session Initiation Protocol)
→ 主にIP電話システム向け。電話ネットワーク連携が主。 - RTMP(Real-Time Messaging Protocol)
→ 大規模ライブ配信向けだが、Flash終了により減少傾向。
Sip.jsとWebRTCの関係
ここまでSIPとWebRTCを別々の技術として紹介しましたが、実はこれらを組み合わせたライブラリも存在します。
代表的なものがSip.jsです。
Sip.jsは、ブラウザでSIPプロトコルによるセッション制御を行うためのJavaScriptライブラリです。
その内部では、通話時の音声・ビデオデータのリアルタイム通信部分にWebRTC技術が活用されています。
まとめると、
- SIP:誰が誰に発信するか、通話の開始・終了など「通話の制御」を担当
- WebRTC:マイク音声やカメラ映像といった「リアルタイムメディア通信」を担当
という役割分担で動作します。
これにより、
- 従来のSIPベースの通信網(企業の電話システムなど)と
- 最新のブラウザベースのリアルタイムメディア通信
をスムーズに橋渡しすることができるのです。
たとえば、企業向けのブラウザ版IP電話や、PBX連携型Webアプリ開発などで、Sip.jsは非常に有力な選択肢となっています。
WebRTCを活用した有名アプリ
実際にWebRTCを使って成功しているアプリ・サービスを紹介します。
1. Google Meet
Googleが提供するビデオ会議サービス。
WebRTCをベースに、ブラウザだけで高品質なビデオ通話ができます。
エンタープライズ向け機能(録画、ノイズ除去など)も搭載されています。
2. Discord
ゲーマー向けチャットアプリとして有名ですが、音声通話やビデオ通話の裏側にWebRTCが使われています。
P2P通信を活かし、低遅延・高音質な体験を実現しています。
3. Facebook Messenger(ブラウザ版)
Messengerのブラウザ版でのビデオ通話・音声通話には、WebRTCが活用されています。
モバイルアプリ版でも、内部ではWebRTCベースの通信が動いています。
4. Clubhouse
音声SNSアプリの先駆け。
リリース初期にはWebRTCベースの音声配信を組み合わせ、低遅延かつスムーズな会話体験を実現していました。
5. Amazon Chime SDK
Amazonが提供するビデオ会議プラットフォーム(Chime)も、WebRTCを技術的にベースにしています。
開発者向けに「Chime SDK」としても提供されており、独自アプリに組み込むことができます。
まとめ
WebRTCは、
- リアルタイムでの音声・映像通信
- インストール不要
- オープンな技術で自由に使える
といった特徴を持ち、多くの現代アプリの中核技術となっています。
また、SIPは電話システム寄り、RTMPは大規模ライブ配信向けという違いも理解しておくと、プロジェクトに合った技術選定ができるようになります。
これからリアルタイム通信を活用したアプリやサービスを作るなら、WebRTCを理解することが大きな武器になります。
この記事が、あなたのWebRTC入門の第一歩になれば幸いです!
参考リンク

大阪のエンジニアが書いているブログ。
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