Laravel Eloquent orOn の使い方とパフォーマンス最適化ガイド

この記事の最終更新日: 2025年4月27日

はじめに
1. on と orOn の役割を整理する
1. 1.1 on の基本
2. 1.2 orOn の基本
2. orOn を用いた具体的なユースケース
1. 2.1 要件定義
2. 2.2 コード例
3. パフォーマンスとインデックスの観点
1. 3.1 OR 条件とインデックス
2. 3.2 対策方法
4. 失敗例と改善例
1. 4.1 失敗例：安易な orOn の多用
2. 4.2 改善例：UNION ALL によるスライス＆ダイス
5. まとめ

はじめに

Laravel の Eloquent クエリビルダは、複雑な SQL をシンプルに記述できる点が大きな魅力です。特にテーブル結合においては、on と orOn を組み合わせることで AND 条件・OR 条件の両方を直感的に表現できます。本記事では、orOn を中心に機能概要から内部動作、具体例、パフォーマンスへの影響、実践的な改善パターンまでを丁寧に解説します。

1. on と orOn の役割を整理する

1.1 on の基本

用途：複数の結合条件を AND で結びたいとき

書き方

$query->join('staffs', function ($join) { $join->on('staff_list.staff_id', '=', 'staffs.id') ->on('latest_histories.staff_id', '=', 'staffs.id'); });

生成 SQL

INNER JOIN staffs ON staff_list.staff_id = staffs.id AND latest_histories.staff_id = staffs.id

この場合は「staff_list と latest_histories の両方で staff_id が一致するレコードのみを結合する」ので、いわゆる『かつ条件』の結合となります。

1.2 orOn の基本

用途：結合条件を OR で追加したいとき
書き方：

$query->leftJoin('staffs', function ($join) { $join->on('staff_list.staff_id', '=', 'staffs.id') ->orOn('latest_histories.staff_id', '=', 'staffs.id'); });

生成 SQL：

LEFT JOIN staffs ON (staff_list.staff_id = staffs.id OR latest_histories.staff_id = staffs.id)

OR 条件を利用することで、『登録されている staff_list か、過去に履歴がある latest_histories のいずれかとマッチすれば結合する』という柔軟な結合が可能です。

2. orOn を用いた具体的なユースケース

2.1 要件定義

プロジェクトに紐づくスタッフ情報を取得したい
スタッフは「現在プロジェクトに割り当てられている staff_list」か「過去に割り当てられていた latest_histories」に存在していれば対象とする

2.2 コード例

$results = Project::from('project_staff_list as staff_list')
    // プロジェクト ID で履歴テーブルを結合
    ->leftJoin('latest_histories', 'staff_list.project_id', '=', 'latest_histories.project_id')
    // staff_list または latest_histories のいずれかでマッチする staffs テーブルを結合
    ->leftJoin('staffs', function ($join) {
        $join->on('staff_list.staff_id', '=', 'staffs.id')
             ->orOn('latest_histories.staff_id', '=', 'staffs.id');
    })
    ->select([
        'staff_list.project_id',
        'staffs.name as staff_name',
        'latest_histories.status',
    ])
    ->get();

実行結果としては、両方のテーブルに存在するスタッフは重複せず１行で取得され、どちらか一方に存在するスタッフも漏れなく取得されます。
実際には、結合先テーブル（staffs）は一度だけ結合されるため、同じ id のレコードが重複して返されることはありません。

3. パフォーマンスとインデックスの観点

3.1 OR 条件とインデックス

データベースは通常、インデックスを使って高速に検索を行います。
OR 条件を含むと、複数のカラムをまたいでのマッチ判定になるため、単一インデックスの効果が薄れ、結果的にテーブルスキャンに近い動作になることがある。

3.2 対策方法

事前フィルタリング：全件取得前に where で絞り込み、対象レコードを減らす。
UNION ALL 分割：OR ではなく、複数のシンプルなクエリを実行して結果を結合。
適切なインデックス設計：複合インデックスを検討する場合もあるが、OR 条件では効果が限定的。

4. 失敗例と改善例

4.1 失敗例：安易な orOn の多用

$query->leftJoin('staffs', function ($join) {
    $join->on('staff_list.staff_id', '=', 'staffs.id')
         ->orOn('latest_histories.staff_id', '=', 'staffs.id')
         ->orOn('archived_staffs.staff_id', '=', 'staffs.id');
});

問題点：
- OR 条件が増えるほど SQL が複雑化し、可読性が低下
- OR 判定範囲が広がり、意図しないレコードが結合されるリスク
- データ量が増えるとパフォーマンス悪化が顕著に

4.2 改善例：UNION ALL によるスライス＆ダイス

// 現在所属中のスタッフ
$q1 = Project::select('project_id', 'staffs.name')
    ->from('project_staff_list as staff_list')
    ->join('staffs', 'staff_list.staff_id', '=', 'staffs.id');

// 過去に所属していたスタッフ
$q2 = Project::select('project_id', 'staffs.name')
    ->from('latest_histories')
    ->join('staffs', 'latest_histories.staff_id', '=', 'staffs.id');

// アーカイブされたスタッフ
$q3 = Project::select('project_id', 'staffs.name')
    ->from('archived_staffs')
    ->join('staffs', 'archived_staffs.staff_id', '=', 'staffs.id');

// UNION ALL で結合
$results = $q1->unionAll($q2)
              ->unionAll($q3)
              ->get();