この記事の最終更新日: 2025年4月26日

はじめに
製品開発の現場では、デザイン→実装→確認といった一連の流れで「認識のズレ」が発生しやすく、手戻りやコミュニケーションコストが大きな課題になります。特にFigmaを活用するチームでは、一つのファイルに情報を集約できる反面、運用ルールが曖昧だと、かえって混乱の温床になり得ます。
本記事では、Figmaを「共通言語」として使いこなし、デザイナーとエンジニアがストレスなく連携できる具体的な運用ルールの作り方を、ステップごとに解説します。
1. なぜFigma運用ルールが必要なのか?
1-1. 発生しやすいトラブル例
- レイヤーの上書き衝突:複数人が同時に編集し、意図しない差分が生まれる
- 命名不統一による探しづらさ:
Btn
,Button
,PrimaryBtn
などバラバラな命名で資産を探せない - デザイン変更タイミングの曖昧さ:どのバージョンが“実装基準”なのか認識が揃わず、二度手間が発生
1-2. 手戻りコストの実態
- 小さなUI修正でもラウンドトリップに平均1.2日掛かるケースあり
- 情報が散在すると、仕様確認だけで30分以上要するプロジェクトも
ポイント: ルールを設けることで、無駄なコミュニケーションを減らし、スピーディにプロジェクトを前進させられます。
2. Figma運用ルール策定の基本方針
方針 | 内容 | 事例 |
---|---|---|
役割明確化 | デザイン作成者、レビュー担当、実装担当を決める | デザイナーはUI作成、エンジニアはDev Mode確認を担当 |
変更タイミング | “Ready for Dev”ラベルでバージョン固定 | チケットに紐づけて、完了条件に設定 |
範囲定義 | 対象画面/コンポーネントを明文化 | スプリント単位、マイルストーンごとに更新 |
ファイル構成 | ページ分け/セクション分けのルールを設定 | “Draft Designs”と”Production Designs”を明確に分離 |
Tip: まずは最小限のルール(MVP)から始め、プロジェクトに合わせて少しずつ追加・改善しましょう。
3. 実際に設定すべき運用ルール例
3-1. コンポーネント設計ルール
- Atomic Designの採用:
- Atoms(最小部品)、Molecules(組み合わせ部品)、Organisms(画面部品)を定義
- Variant(バリアント)の活用:
- ボタンの状態(通常、ホバー、押下)を一つのコンポーネントで管理
- サンプル:
Button / Primary / Default
,Button / Primary / Hover
と命名
3-2. レイヤー・フレーム命名規則
- 英語ベースのパス形式で命名(例:
Form / Input / Error
) - こまめにコメントを付与し、役割を明示
- レイヤー階層は最大3階層に抑え、ネストしすぎない
3-3. Variables(変数)の管理ルール
- カラー、タイポグラフィ、スペーシングを必ずVariablesに登録
- テーマ切り替えが必要な場合は別ファイル(もしくは別ページ)で管理
- 禁止: 個別要素に直接色コードを設定しない
3-4. コメント・フィードバック運用
- コメントの使い分け:
Question
: デザイン意図の確認Request
: 修正依頼Info
: 資料リンクなど補足情報
- 解決(Resolve)フロー:
- 検討完了後、コメントをResolveに設定
- 関連チケットやSlackに通知を飛ばす
3-5. バージョン管理と履歴活用
- 手動スナップショット: 重要なマイルストーン前にスナップショットを保存
- ファイル名のバージョニング:
v1.0
,v1.1
……と明示 - 履歴モード: 過去の変更を辿り、差分を確認できる運用を推奨
4. 導入時の注意点と段階的適用方法
- ベータ運用(1〜2週間)
- チームリーダー+キーメンバーだけでルールを試す
- フィードバックを集めてルールをブラッシュアップ
- 正式運用フェーズ
- 全員向けにガイドラインを共有(ドキュメント+Slack告知)
- ルール遵守状況を定期レビュー(週次スタンドアップなど)
- 継続的改善
- 月次またはスプリント単位でルールの効果を振り返り
- 必要に応じて追加ルールや削除を実施
5. 成功事例:小規模〜中規模チームでの運用例
- 5人チーム:
- ベータ運用後に「Ready for Dev」ラベルを導入 → バグ報告数を30%削減
- 15人チーム:
- Atomic Designルール適用でコンポーネント再利用率が1.7倍に向上
- 30人以上のチーム:
- コメント種別の統一運用で、Slackでの問い合わせが月平均15件から5件に減少
6. 補足:おすすめプラグイン&ツール
プラグイン名 | 用途 | おすすめポイント |
---|---|---|
Figma Lint | 命名規則の自動チェック | コンプオーナーに守らせたいルールを自動検証 |
Themer | Variables一括変更 | light/darkテーマ切り替えが簡単に |
Figmotion | シンプルアニメーション | プロトタイプに動きを追加できる |
Design System Organizer | コンポーネント整理 | 使用頻度・未使用コンポーネントの可視化 |
7. まとめ & 次の一歩
運用ルールは「縛り」ではなく、チームの効率化と品質担保のための仕組みです。まずは小さく始めて、チームの課題に応じて育てていきましょう。
- まず今日からできること: Variablesに一つだけColor Tokenを登録してみる
- 次にやるべきこと: コンポーネント命名ルールをチームで合意し、サンプルを作成
Figmaを使いこなすチームこそ、デザインと開発の境界をなくし、プロダクトのスピードと質を最大化できます!

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